本日は文庫版「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 case.双貌塔イゼルマ」の感想を綴ります。
※しっかりネタバレを含むためご注意下さい
あらすじはこちら
蒼崎橙子の参戦
今回の目玉の一つが「蒼崎橙子」の登場です。
蒼崎橙子の登場作品の一例としては以下の通り。
「空の境界」 黒桐幹也の雇い主であり主要人物
「魔法使いの夜」 主人公・蒼崎青子の姉
「Fate/ZERO」 ロード・エルメロイの義手を仕立てる
TYPE-MOON作品を繋ぐ人物の一人といえます。
他作品で知っている人物が登場するとワクワクしますね。
アハ!体験というやつでしょうか。
Fateシリーズにおいて、作品同士だけでなく現実社会、歴史、神話との繋がりの広さ、深さは大きな魅力の一つです。
自分の知識や琴線に少しでも触れるものがあり、それに気づいた瞬間にグッと作品に惹き寄せられますね。
しかも今回はゲスト的に登場しただけかと思いきや、物語にがっつり組み込まれています。
事件の真相に関与するだけでなく、魔術戦も繰り広げます。
vs エルメロイ教室
「まさかそうくる!」と胸を高鳴らせながら、物語の終盤を夢中で読み耽りました。
エルメロイ教室の戦力は
・アッドを有する戦闘特化のグレイ
・色位並の実力と評される天才フラット
・次作では典位に昇格するほどの実力を持つ獣性魔術の使い手スヴィン
TYPE-MOON世界でも上位の実力をもつ(と私は認識している)面々。
が、蒼崎橙子はこれを軽くいなします。
「封印指定を受けた冠位魔術師」の実力を窺える希少な一幕です。
最終的には不意とはいえ「匣の中身」まで開放される始末。
いや~面白かった(満足)
きっと映像化したら映えるだろうなぁ~
「空の境界」で披露した匣もそうですが、
・狼坊主を懐かしむ
・ルーンを公園に敷き詰め、夜という属性そのものを奪い去った
といった、恐らく「魔法使いの夜」で出たネタも散見されました。
そんなことされると「魔法使いの夜」プレイしたくなるじゃない!
いつかいつかと思いつつもう発売から8年も経ってしまった・・・
「魔法使いの夜」は続編も制作されているという噂なので、それまでには履修しておきたい。
まとまった一人の時間(子どもたちが実家に遊びにいく春休み)を狙ってプレイしようと画策中です。
グレイの変化
グレイの秘密が少しずつ紐解かれていきます。
今回の事件の中心にいる黄金姫・白銀姫。
作られた究極の美。
そんな二人に自分を重ねるグレイ。
「アーサー王の再来」として調整されたことが明かされました。
そしてこの秘密を、事件の真相に関わっていると思ったからとはいえ、ライネスにも打ち明けます。
世界から孤立するように閉じこもっていた殻から出ようとしている、変わっていく姿が描かれています。
エピローグでフラット、スヴィン、ルヴィアの仲裁に自ら飛び込む姿には心がホッコリしました。
そして師匠との関係性にも変化が。
剥離城アドラの一件の後に「この人について行こう」と決心したグレイでしたが、
今回の最後には師匠が会いたい人に会わせてあげたいという「初めての願い」を抱いたところで今回の物語は幕を閉じます。
今回は、事件簿シリーズは「ロード・エルメロイⅡ世が星を追いかける旅路」であると同時に「グレイの物語」でもあることを感じられるような物語だったと私は思います。
解説・あとがきという名の制作裏話
解説:成田良悟(Fate/strange Fake作者)
あとがき:三田誠
引用
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 case.双貌塔イゼルマ
解説と見せかけた形容しがたき何か(成田良悟)下巻p282~285
あとがき(三田誠)上巻272,273 下巻p286~289
「FGO」「Fate/strange Fake」「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」の構想が練られていた頃のやりとり。
パラレル万歳!FGOぐらい無茶してしまえ!
FGOの設定はどこまで拾わないといけないの俺?
明暗が分かれましたね!
同時期に始まった2つの作品の路線は、作者のカラーもあることながら、最初の神の一声によって大きく分岐していたようです。
また成田さんの事件簿という作品、エルメロイⅡ世や三田誠という人物に対する解説が面白かった!ということで一部引用させて頂きます。
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿という作品
シュレディンガーの箱と化していた「時計塔」の蓋を躊躇うことなく開け広げた、ある種の魔術儀式めいた「解説書」
エルメロイⅡ世という人物
Fate世界の隅々まで広がる枝と太い根を持ち、世界樹とも言えるような存在。
自分ではそれに気付かず「所詮は木だぞ?燃やされればそれで終わりだ」と飄々としつつも、心の内では世界樹の枝葉すら届かぬ最果ての海に至らんと願うなんとも厄介な御仁。
「あぁ確かに」と胸にストンと落ちるような本質を捉えた内容が、作家の文章力・語彙力で如何なく綴られています。
作家陣による解説書、裏話だけで一冊作って欲しいぐらい。
この2作目の発売にあたってこんなやりとりがあったそうです。
「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」の発売日
剥離城アドラ 2014/12/23
双貌塔イゼルマ(上) 2015/8/14
双貌塔イゼルマ(下) 2015/12/4
こんな二人を成田さんは「奔放なれど力強い王様、そしてそれに振り回される若いマスター」と表現しています。
いとエモし
case.双貌塔イゼルマ まとめ
時計塔(魔術協会)というFateシリーズでは重要な組織。
これまでの作品の中でも幾度も現れてきましたが、
物語の中心になるのは「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」が初の試みではないでしょうか。
そしてブラックボックスが解き明かされることで、これまでの作品の面白さが一層引き立つのではと思います。
続編でどんな人物・難関が立ちはだかり、ロード・エルメロイⅡ世もといウェイバー・ベルベットとグレイがどのように変化・成長していくのか目が離せません。
本記事はロード・エルメロイⅡ世の事件簿 case.双貌塔イゼルマ©三田誠・TYPE-MOONの引用を含みます。



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