本日は文庫版「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 case.魔眼蒐集列車」の感想を綴ります。
※しっかりネタバレを含むためご注意下さい
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物語は新しいステージへ
今回をもって、ロード・エルメロイⅡ世の物語、事件簿シリーズという作品は大きな転換を迎えます。
これまでの2作品でのエルメロイⅡ世は事件における第三者、探偵役としての役割を果たしていました。
しかし魔眼蒐集列車では、明確にロード・エルメロイⅡ世の敵となる人物が登場します。
それにより「王にもう一度会うために第五次聖杯戦争に参加する」という一つの到達点にけじめをつけ、ロード・エルメロイⅡ世あるいはウェイバー・ベルベットとして自身のやるべきことを新たに見定めたところで物語は一度幕を閉じます。
あくまでエルメロイⅡ世やTYPE-MOON世界を素材としたミステリー風作品が、王の背中を追う旅路を綴るロード・エルメロイⅡ世自身の物語へと大きく方向性が変わったと私は読了後に感じました。
作品の印象が変わった理由は、エルメロイⅡ世の心境や目的の変化によるものだけでではありません。
事件解決に向けた終盤でエルメロイ教室の面々が集うシーン、主要人物全員がそれぞれの役割を果たし協力して一つの敵と対峙する様、グレイの新しい力の開放といった熱い展開が目白押しだったことも大きな要因です。
最後の方は読んでいて王道の少年マンガを読んでいるような感覚で惹き込まれていました。
TYPE-MOON世界への広がり
ロード・エルメロイⅡ世は様々なFateシリーズに登場して各作品の世界観を繋ぐキャラクターの一人です。
そんな彼を中心に据えた物語ですが、今回も他作品との関連性が多く盛り込まれています。
魔眼
タイトルにも出ている「魔眼」
これはもうTYPE-MOON世界と切っても切れません。
なにせ創成期の作品「月姫」の主人公・遠野志貴の「直死の魔眼」として一番最初に出た魔術的要素です。
「直死の魔眼」…なんて厨二心をくすぐるネーミング、素敵
Fateシリーズや空の境界など魔眼が出てこない作品はないのでは?
サーヴァント
Fateシリーズの肝となる要素「サーヴァント」
事件簿シリーズの舞台は聖杯戦争の渦中ではありませんがなんと投入されました。
ロード・エルメロイⅡ世とサーヴァントのやり取りはとても印象深いシーンですし、
これまで事件簿2作品のテイストが変わってきたことを感じさせるファクターになっていると感じます。
オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア
Fate/Grand Orderにて登場したキャラクター。
時系列の関係で11歳くらいです。
作中ではまだ幼い一面はありますが、時計塔ロードの娘としての威厳や大魔術(FGO2部5章でも出たアレ)を行使する抜きん出た能力を発揮します。
彼女の活躍はアニメで派手に描かれているのでそちらもオススメです。
FGOの方では初期に非業の最期を遂げますが、こちらは父マリスビリーが大聖杯が使い物にならないと判断したことで聖杯戦争に参加しなかった世界線。
今後の活躍がとても気になります。
カウレス・フォルヴェッジ
Fate/Apocryphaにおける黒のバーサーカーのマスター。
本作では聖杯大戦が起こらず(冬木の大聖杯が失われていない)、姉フィオレが魔術師をやめたことで時計塔に入学、エルメロイ教室の生徒になったばかりという生い立ちです。
Apocrypha含め、優秀ではないが頼りになるという印象を持ってますが、終盤の戦闘において活躍してくれます。
私から言えることはただ一つ・・・
今回といいApocryphaの最終戦といい、彼とバーサーカーの繋がりの見せ方はズルいですよ。。。
グレイの変化
この作品の見どころの一つはグレイの成長・変化です。
カウレスとの接し方が友達のようであったり、相手に踏み込んだ質問を投げかける場面からも変化が窺えます。
イゼルマの事件を経て「師匠が会いたい人に会わせてあげたい」という「初めての願い」を抱きました。
そして今回はサーヴァントと対峙し絶体絶命のピンチの中で、「自分がどうありたいか自身に問いかける」場面が訪れます。
アッドの問いかけに続く
「十三拘束解放ー円卓議決開始!」
このあたりの一連の流れは物語終盤の勢い、熱さも相まって鳥肌モノでした。
アニメも良かったのですが、特に文章の良さが出ていたと感じたのでぜひ本で読んで欲しいところです。
解説・あとがき
解説:東出祐一郎(Fate/Apocrypha作者)
あとがき:三田誠
TYPE-MOON世界の根幹を為す「魔術」
魔術とはなんなのかを深く知るほどこの世界の奥深くに嵌っていくと、東出先生が説うてくれます。
「魔法使いの夜」や「空の境界」を勧めているとこもわかりみが深い。
そして〆の言葉
TYPE-MOON名物「困ったときは三田先生に頼れ」
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 case.魔眼蒐集列車(下) p.385
前巻の解説でもそうだったけど、三田先生の頼られ具合が凄い!
おわりに
冒頭でも述べましたが、今回の魔眼蒐集列車はロード・エルメロイⅡ世の物語、事件簿シリーズという作品の大きな転換期に位置すると言えます。
三田先生もあとがきにて「シリーズ全体の後半戦」とおっしゃられています。
今更ですが、なぜアニメ化が最初の2作品ではなく本作が選ばれたのかが分かったような気がします。
アニメは最後少し物語が落ち着ちついた演出が為されていましたが、単なるロード・エルメロイⅡ世を素材にしたミステリー風作品ではなく、彼自身の戦い・物語が展開されていくことを伝えるための選択だったのだと思います。
まぁ当時の私は「面白いな~キャラデザ可愛いな~やっほい!」くらいの感じで楽しんでいたのですが(浅はか)。
アドラ、イゼルマから読むことで、物語が進んでいくにつれての変化を感じて頂けたらなぁと思います。
次巻の「アトラスの契約」からは私にとっても未知の領域なので今から読むのが楽しみです。
2020年冬には「ロード・エルメロイⅡ世の冒険」の刊行が決まっているので、それまでに事件簿シリーズを読了したいところです。
本記事はロード・エルメロイⅡ世の事件簿 case.魔眼蒐集列車©三田誠・TYPE-MOONの引用を含みます。



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